みんな消えていった。
私は1人残されて…
残されて…
公園でクレープ屋なんかやっている。
「アーモンドチョコ生クリーム一つお待ちどうさま」
甘い物はスキじゃなかったが、笑顔の側にいたかった。
甘い物を食べるとほとんどの人が笑顔になった。
たまに嫌いなやつがいてそいつに悪戯で食べさせたりしたこともあったっけ。
でも、それは全て過去の話。
もうその時一緒にいた奴らはいない。
物心ついた頃私は傭兵として戦場にいた。
父も母もいなかった。
いたのは何重も年上の仲間達だった。
戦場は仲間を奪っていった。
戦が終わった時、何十人もいた仲間は誰もいなくなっていた。
たった1人、大金を貰って私は途方に暮れた。
戦場こそ私の生きる場所。
闘うこと以外何も出来ない私に唯一出来るのは料理だった。
レーションに飽きた仲間の為に、私はよくクレープもどきを焼いていた。
仲間達は美味しいと言ってくれて、その時だけはそこが戦場であることを忘れられた。
何年か戦場を渡り歩いたが、人が死ぬのに慣れることはなく、有り余る金でN◎VAと言う街でクレープ屋をやることにした。
「ビタースィート一つ」
でも、どこから嗅ぎ付けてきたのか、私が傭兵上がりだと知った人間がこうして殺しを依頼してくる。
「すみません。今、きらしてるんですよ。お届けしますので住所をこちらに」
私は殺し屋じゃないのに。
ただのクレープ屋なのに。
そう思いながらも、どこかで喜んでいる自分を感じる。
人の死を嫌いながらも、死と紙一重のあの感覚を望む自分がいる。
それは矛盾する感覚だと分かっているのに。
もしかしたら私はいきたいのかも知れない。
仲間達の待つ約束の場所へ。